JDream Innovation Assistは、論文・特許・新聞記事の3つのファクト情報を、技術動向/プレイヤー・競合/特定機関/特定研究者の4つの観点で技術を軸に分析、分析結果を自動でグラフに可視化するサービスです。
業種
製造
モビリティ・交通
その他
規模
5,000人~9,999人
部門
研究開発
調達
ロジスティック
キーワード
戦略
アイデア
オープンイノベーション
共創
グローバル
知財
教育
予算獲得
負荷軽減
競合分析
掲載日:2024年7月26日
AGC株式会社 AGC Inc.
- 従業員数
- 7,753名(2023年12月31日現在)
- ウェブサイト
- https://www.agc.com/
- 導入サービス
-
- JDream Innovation Assist
- JDreamⅢ
お話を伺った方
- 部署名
- 材料融合研究所・開発推進チーム
- 役職
- シニアマネージャー
- お名前
- 川上 玲美 氏
- 担当業務
- 研究員の知財教育、ツール活用の啓蒙
- 部署名
- 材料融合研究所・開発推進チーム
- 役職
- マネージャー
- お名前
- 寺園 真二 氏
- 担当業務
- 研究開発に必要な情報環境の整備・構築研究員への推進・サポート
課題
- 研究員に自分の分野だけでなく、俯瞰性を持って知財情報を取得して欲しい。
- 分析用データの収集やレポート化などの調査にかかるストレスを下げたい。
- 新聞記事が自分たちのテーマとリンクしているという意識を高めたい。
活用法
- 競合動向の定点観測、情報のキャッチアップツールとして活用。
- 新しい研究テーマの創出、事業化の確度向上を促進。
- 研究テーマの予算獲得に向けた社内プレゼン資料のエビデンスに利用。
効果
- グラフで俯瞰的な見方が出来るようになり、研究員の視野が広がった。
- 知識欲が刺激され、自分たちのお客様の業界動向まで調べるようになった。
- 他社と具体的な数値で比較できるため、議論が捗り正しい形で進む。
いま技術開発は熾烈な大競争時代に入った。新たな技術が、数年のうちに人々の生活や企業活動を大きく変え、経済効果は世界中に広がる。企業には、研究開発から製造技術の確立までの各段階のスピードアップが求められることはもちろん、各段階において「これで世界に勝てるのか」という意識が求められる。AGC株式会社では2020年に研究開発体制を刷新。研究者・技術者一人ひとりの戦略的思考を促し、その成果を社内で幅広く共有するために「JDream Innovation Assist」を活用している。
課題と背景知の融合で革新的創造を実現
世界最大規模のガラスメーカーの一つであるAGC株式会社(以下AGC)は、コア事業として建築材料、自動車向けのガラスを中心に電子部材など高機能の化学関連素材を扱ってきた。そして今、新たな成長の軸となるべき戦略事業として掲げるのが「エレクトロニクス」「モビリティ」「ライフサイエンス」の3分野だ。
挑戦的な領域において戦略的かつ迅速な研究開発を実現するためには研究開発体制の刷新が不可欠だったという。AGCでは2020年に「AGC横浜テクニカルセンター(以下YTC)」を設立。旧中央研究所などに分散していた機能を統合することでコア事業と戦略事業が両輪となって成長を加速する体制を作りあげた。
YTCの最大の特徴は「研究・開発」「プロセス開発・試作」「量産・出荷」の各段階をシームレスにつなぐ新たな組織を構築したことだ。各領域が縦糸でつながるだけでなく、さまざまな領域・段階の技術者・研究員が横糸のようにつながることで、互いに刺激しあってアイデアを生み出す環境づくりを目指したという。さらにはアカデミア、パートナー企業とも連携し、オープンイノベーションの場にもなり、AGCではその協創空間を「AO(あお)」(AGC OPEN SQUARE)と名付けた。
YTCは2つの研究所と生産技術部など12の組織で構築されているが、その一つである「材料融合研究所」は、AGCが長年培ってきた無機・有機材料からライフサイエンス分野にわたる幅広い材料技術と、それらの融合化やユニークな機能設計など素材イノベーションの要となる研究所だ。「材料融合研究所」において開発推進チームは「協創」を実現するためのオープンイノベーションを推進するとともに、研究・開発に必要な複数の文献情報解析ツールを提供することでYTC全体の研究開発をサポートしている。
採用の理由研究員による積極的な特許情報利用を加速
YTCが「JDream Innovation Assist」を導入したのは2022年のことだ。材料融合研究所・開発推進チームの寺園真二さんは「グローバルな技術開発競争が激しさを増すなか、短期間で確実な成果を得るためには、戦略的かつ柔軟な視点で技術動向を見定めることが重要になる。本サービスを知ったとき、研究員の戦略的テーマづくりに役立つツールになると感じた」と話す。
いまAGCの研究員一人ひとりに求められているのは、知財戦略を考慮した研究戦略だという。知財に関する情報活用の啓蒙を担当している川上玲美さんは「これからはより広い分野の特許情報を俯瞰し、特許を自社の権利を確保するための武器として活用して欲しいと訴えてきたが、ハードルの一つとなっていたのは特許分類(IPC)だった」という。
IPCは特許文献の技術内容に基づいて作成された分類で、国際的に統一されている。より正確な特許調査を行うため、IPCは生物の系統図のようなツリー構造となっており、各IPCには詳細な説明文が付与されている。これまで研究員は専門性が高く、IPCの知識は自分の研究領域に偏りがちだったため、他領域に広げて調査することが難しかったのだ。
そこで川上さんが研究員たちに勧めたのが「JDream Innovation Assist」だ。本サービスでは、研究員が注目した用語を入力するだけで、関連するIPC注1に分かり易い説明文が付与されているため「この障壁を解消し、多くの研究員が領域を広げて戦略的な検討を行いやすくなった」と話す。
もちろん特許は企業の技術戦略にとって最重要な資産である。複数のツールを用いてより精密な調査を行うこともあるが、最初の一歩を研究員自身が探せるツールとして本サービスへの評価が高まっているという。
導入効果1新聞情報にも注目する研究員が増加
戦略的研究開発には競合企業、パートナー企業の動向を見極めることも重要だ。その情報を豊富に含んでいるのが新聞記事だ。開発推進チームでは、各種情報ツールの利用頻度を定期的に調べているが、「JDream Innovation Assist」導入後、新聞情報に関する検索頻度が増えていることに気づいた。
川上さんがその理由として考えているのは「これまであまり意識してこなかった新聞記事が、技術情報と同時に出力されるので、そこに書かれた技術動向や業界情報が目に入ってくる。そこで新聞への意識が芽生えると同時に、研究員の知識欲が駆られているのではないか」ということだ。
「企業の5カ年計画」「企業が抱えている訴訟」など、一見技術とは無関係に見える情報を含む「新聞記事の重要性」に気づいた研究員が少なくないという。本サービスで得られた「ヒント」を基に、複数の新聞情報を調査することで研究員の知識欲が満たされていくのだろう。
川上さんも新聞情報の重要性を指摘する。研究テーマの立案者にアドバイスしているのは「自分たちは社内ベンチャーだと考えて欲しい。あなたが社長なら、この技術が社会をどう変えるか、競合企業に勝てるかなど説明できなければ研究開発予算を配分してもらえない」ということだという。説得力の高い論点を探すためには、経営の視点、地政学、国際的な視点など幅広い情報が必要となる。
また、AGCは「ルール・インテリジェンス」を重視している。例えば、社会情勢は環境規制から社会インフラづくりなど、製品開発は各国のルールメイキングと深く関わっている。AGCは、新たな技術分野においてルールづくりの中心にいることができるかなどについても、新聞情報から得られる視点はたくさんありそうだ。
導入効果2可視化が高めた情報プラットフォームとしての価値
寺園さんは「YTCにおいて、JDream Innovation Assistの情報プラットフォームとしての価値を高めた機能が可視化だ」と指摘する。本サービスでは「論文・特許・新聞からみる技術動向」「主なプレーヤーの動向と比較」「注目企業の技術ポートフォリオの動向」「大学・企業・研究者の共創ネットワーク」などをグラフ化して示すことができる。
可視化ポイント1情報から得られた「結論」が一目で分かり、情報共有にも利点がある
グラフ化の利点の一つは、膨大な量の情報から導きだした「結論」を、ひと目でイメージできることだ。例えば、AGCが定点観測している技術動向などを基に開発プランを立てるとき、数字の羅列では参加者によって理解が異なる可能性があるが、グラフなら同じ結論を共有しながら、より深い議論を行うことができる。YTCでは、研究員以外でも多くの社員が「データがグラフ化されることで非常に理解しやすくなった」と話しているという。
可視化ポイント2相関図で共同研究のための調査が短時間で行われる
「JDream Innovation Assist」では、新たな可視化機能を次々とリリースしてきたが、そのなかで寺園さんや川上さんが注目するグラフが「大学・企業・研究者の共創ネットワーク」だ。
かつては「企業Aは大学Bの教授Cと共同研究」など個別の情報を基に、全体像を組み立てる必要があったが、本サービスであれば、キーワードを入れるだけで全体像が出力されるため、共同研究者の探査などに時間を取られることがない。寺園さんはその精度を確認するために、無機・有機複合材料の専門家であった自分のネットワークをグラフ化してみた。
その結果「研究者や機関とのつながりが正確に表示され、つながりの強さもグラフ上で表現されていた」という。
導入時〜現在に至るまでの使用感協創空間のプラットフォームとして機能
「JDream Innovation Assist」導入はYTCが設立された2年後の2022年。寺園さんは「同じ時期に立ち上がり、新テーマの創出に役立つツールとして、うまく運用できてきたと感じている」と振り返る。そして本サービスの可視化機能は、YTCが構築した「協創空間」を支えるプラットフォームとしても機能しはじめたという。
川上さんは「利用者登録をしている部門を見ると研究・開発部門だけではなく調達・ロジスティクス部門のスタッフも活用していることが分かる」と話す。原材料などバリューチェーンを構築する部門になるが、今後は研究・開発との連携も重要になってくるだろうと指摘する。
理由は、原料の調達や価格が事業家の重大なノックアウトファクターとなることが少なくないからだ。開発が進んでから問題が浮上するのは避けたい。研究開発の早期に両者が情報共有をすることで、事業化の確度を高めることが可能になる。
このように、YTCでは異なる部門の担当者同士が情報共有するプラットフォームとしても本サービスが役立つと考え始めている。研究者が発信する技術情報を、他の領域のスタッフがすぐに理解することは難しい。しかし、「可視化機能によって原材料調達を含めた業界全体を俯瞰することで、高いレベルで情報共有できる可能性がある」と川上さんは指摘する。
今後は、本サービスをコミュニケーションツールとして活用するケースも多くなりそうだ。検索や可視化にかかる時間が短く、サクサク動くため、思考を止めずにリアルタイムのコミュニケーションが可能になると期待する。
今後の取り組みまわり始めた思考を途切れさせない情報ツール
今後「JDream Innovation Assist」は、AGCにとってどのような存在となっていくのか。開発推進チームでは、各自の研究テーマを深化させるためには、まずは広く情報を収集し総合的に判断することが重要であり、それを可能にするのが本サービス最大のメリット。多くの研究員が始めに使うツールとして広まり始めているという。
川上さんは「JDream Innovation Assistの利用で、まわり始めた思考を途切れさせず、次の解析につなげやすいことも、このツールの大きなポイントだ」と指摘する。本サービスのなかで科学技術論文、特許、新聞の解析をシームレスにつなげていくことができれば、前述の特許調査のように、本サービスで得た特許情報活用のヒントを他の特許情報解析ツールで深掘りしていくこともできる。最近では複数の分析を連続して行うための基本的な考え方についても、事例を通じて紹介しているという。
AGCでは本サービスの特徴が研究員によく理解されることで、利用者数が増えてきている。寺園さんは「今後、さらなる機能強化が図られると思うが、その開発コンセプトを大切にすることで、誰もが最初に利用する情報調査の入口のツールとしてのデファクトスタンダードを目指して欲しい」と期待している。
- 注1:IPC
- 国際特許分類(International Patent Classification:IPC)は、特許文献を技術分野に基づいて分類する国際的な分類体系です。
JDream Innovation Assistでは、IPCを論文・新聞記事に機械的に付与、特許庁の注釈をもとにジー・サーチ独自の注釈を作成・付与しています。
JDream Innovation Assist サービス紹介資料
- 特長(情報リソース、機能、操作性、画面、グラフ、サポート、海外特許情報オプション など)
- 料金プラン(標準プラン / セットプラン / 海外特許オプション)
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